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副業・兼業は認められるか? ― 副業・兼業禁止の法的リスクと経営者が取るべき最適解

スタッフブログ

2026.08.24

はじめに

近年、国を挙げて副業・兼業の推進が進む中、多くの小規模企業が依然として就業規則で「一律禁止」を設けています。しかし、そこには労働者の自由時間を過度に制限することによる重大な法的リスクが潜んでいることをご存じでしょうか。本記事では、神奈川県を中心に全国の労務管理をサポートする社会保険労務士が、副業・兼業をめぐる時代の変化、禁止や制限が認められる例外的な条件、そして経営者が実務で押さえるべき届出や健康管理の手順を分かりやすく解説します。

時代の変遷と「原則容認」へ向かう社会動向

政府は「働き方改革実行計画」において多様な働き方を後押しするため、副業・兼業の普及促進を図る方針を掲げました。これに伴い、厚生労働省は平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、令和2年、令和4年にも改定を重ねています。また、同省の「モデル就業規則」からも、かつての「許可なく他の業務に従事しないこと」という禁止規定が削除され、「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という原則容認の規定に改められました。このように、かつては「禁止が当たり前」だった副業・兼業をめぐる認識は、国を挙げて「原則容認」へと大きくシフトしています。小規模企業の経営者の皆様も、この時代の変化を捉え、自社の制度を見直す時期に来ています。

多様な働き方を後押しする政府ガイドラインと企業対応の現在地

政府のガイドライン公表やモデル就業規則の改定を契機に、民間企業でも副業・兼業を認める動きが急速に広がっています。経団連の調査ではすでに5割以上の企業が副業・兼業を認めており、今後認める予定の企業を合わせると7割を超えています。また、厚生労働省が実施したヒアリング調査でも、多くの先進的な企業が「雇用型」や「非雇用型」の副業・兼業の解禁に踏み切っている実態が明らかになりました。もはや副業・兼業の容認は一部の大企業だけの取り組みではなく、多様な人材から選ばれる企業になるための必須条件になりつつあります。神奈川県内の中小企業においても、採用力の強化や既存社員の離職防止を目的として、前向きな制度整備に取り組む経営者が確実に増えているのが現状です。

労働者のキャリア意識の変化と容認がもたらす企業のメリット

正規労働者のうち、実際に副業を行っている割合はまだ少数ですが、副業・兼業を希望する人の割合は年々増加傾向にあります。労働者が副業・兼業を希望する理由としては、収入増だけでなく「自分が活躍できる場を広げたい」「スキルアップや主体的なキャリア形成を図りたい」といった前向きな意識の変化が見られます。企業にとっても、自社だけでは得られない高度な知識やスキルの獲得、従業員の自律性の育成、組織の活性化、さらには優秀な人材の獲得や流出防止といった多大なメリットをもたらします。副業・兼業をたんなる「労働時間の切り売り」として捉えるのではなく、正規労働者のうち、実際に副業を行っている割合はまだ少数ですが、副業・兼業を希望する人の割合は年々増加傾向にあります。労働者が副業・兼業を希望する理由としては、収入増だけでなく「自分が活躍できる場を広げたい」「スキルアップや主体的なキャリア形成を図りたい」といった前向きな意識の変化が見られます。企業にとっても、自社だけでは得られない高度な知識やスキルの獲得、従業員の自律性の育成、組織の活性化、さらには優秀な人材の獲得や流出防止といった多大なメリットをもたらします。副業・兼業をたんなる「労働時間の切り売り」として捉えるのではなく、従業員の能力開発やモチベーション向上の貴重な機会として活かす姿勢が、これからの経営者には求められています。

裁判例から学ぶ「副業・兼業禁止」の法的リスクと制限できる条件

多くの経営者が「本業がおろそかになるのではないか」という懸念から、就業規則に「副業・兼業は一律禁止」と定めたままにしています。しかし、これには極めて高い法的リスクが潜んでいます。副業・兼業に関する過去の裁判例では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」という原則が確立しているからです。したがって、合理的な理由がないにもかかわらず会社が副業を一律に禁止したり、無許可の副業を理由に従業員を解雇・懲戒処分にしたりした場合、裁判でその処分が「解雇権の濫用」として無効と判断されるケースが多々あります。処分の無効だけでなく、多額の慰謝料や未払賃金の支払いを命じられるリスクもあり、一律禁止の就業規則を放置することは得策ではありません。

なぜ「一律禁止」は危険なのか?労働者の自由という法的原則

労働基準法等の観点からも、勤務時間外はプライベートな時間であり、基本的には司法や法的解釈において労働者の自由裁量に委ねられるべき領域とされています。実際に「マンナ運輸事件」や「東京都私立大学教授事件」といった裁判例でも、会社側の不許可処分や懲戒解雇が、本業への具体的な支障が認められないことを理由に権利濫用として無効と判断されています。労務契約の本質は、定められた勤務時間中に誠実に労務を提供することです。時間外の活動に対して、合理的なリスクがないにもかかわらず会社が過度な干渉や一律の禁止を行うことは、信義誠実の原則や職業選択の自由に抵触する恐れがあります。そのため、現在の労務管理において「一律禁止」は極めてリスクが高いと言わざるを得ません。

裁判例が認める、副業・兼業を例外的に「禁止・制限できる4つの条件」

ただし、いかなる副業・兼業も制限できないわけではありません。裁判例や厚生労働省のガイドラインでは、例外的に以下の「4つの条件」のいずれかに該当する場合には、副業・兼業の禁止や制限が許容されるとされています。
 1. 自社への労務提供上の支障がある場合
 2. 業務上の秘密が漏洩する場合
 3. 競業により自社の利益が害される場合
 4. 自社の名誉や信用を損なう行為、または信頼関係を破壊する行為がある場合
例えば、同業他社での勤務(競業避止義務違反)や、連日の深夜労働により本業中に居眠りをするような事態(労務提供の支障)が生じる場合は、制限が可能です。就業規則にはこれら制限できる合理的な基準を明記し、適正な運用を行う必要があります。

小規模企業の経営者が実践すべき具体的な労務管理と実務のポイント

副業・兼業の法的リスクを回避し、かつトラブルを未然に防ぐためには、経営者として守るべきルールや実務手順をあらかじめ整備しておくことが極めて重要です。具体的には、労働契約法上の信義誠実の原則に基づき、労働者と使用者の双方が誠実に誠意を持って対応し、納得感のある合意を形成することが求められます。会社としてはまず、自社のホームページや採用パンフレット等を通じて副業・兼業の許容状況やその条件を公表することが推奨されています。これにより、透明性の高い人事姿勢をアピールでき、意欲ある優秀な人材の確保にもつながります。その上で、社内ルールとして従業員から事前に届出を行わせる「届出制」を導入し、個々の副業・兼業が禁止事項に抵触しないかを事前に審査・確認する体制を構築しましょう。

就業規則の改定とトラブルを防ぐ「事前届出ルール」の構築

実務の第一歩は、現在の就業規則を「原則容認・例外制限」の構成に改定することです。その上で、従業員が副業・兼業を始める前に、必ず「副業・兼業に関する届出書」を提出させる仕組みを整備します。届出書には、副業先の事業内容や具体的な業務内容、勤務する日時、雇用形態、報酬の有無などを記載させます。これらを確認することで、競合関係にある仕事や企業秩序を乱す恐れがないかを適切に判断できるようになります。内容に問題がない場合は、トラブル防止のために会社と労働者との間で「合意書」を交わすことが推奨されます。なお、副業・兼業で年間20万円を超える副収入を得た従業員には、確定申告が自己責任で必要になる旨も事前に注意喚起しておくとスムーズです。

従業員の健康を守る「労働時間管理」と「健康確保措置」の実務

副業・兼業を容認する上で、経営者が最も注意すべきは「過重労働の防止」です。他社で雇用される形で働く場合、原則として自社と他社の労働時間を通算して管理する必要があります。この通算管理や割増賃金支払いの手続的負担を軽減するため、実務では簡便な「管理モデル」の導入が極めて有効です。管理モデルでは、事前に自社の法定外労働時間と他社の労働時間を合計し、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内でそれぞれの上限を設定し、その範囲内で労働させます。また、従業員の健康状態を損なわないよう、必要に応じて時間外労働の抑制を指導したり、心身の不調があればいつでも社内で都度相談できる体制を整えるなどの安全配慮義務を履行することが重要です。

まとめ:法的リスクを回避し、多様な働き方を企業の成長につなげるために

時代の変遷に伴い「一律禁止」には高い法的リスクが伴います。経営者の皆様は、就業規則を改定し「届出制」による確認ルートを整備した上で、労働時間管理においては簡便な「管理モデル」の活用や、健康相談窓口を整えるなどの健康確保措置を講じることが重要です。トラブルを防ぎながら、従業員の成長を企業の活力に変える前向きな労務管理を今こそスタートさせましょう。


※画像出典:厚生労働省資料『副業・兼業の事例集~24社から学ぶ~』より

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