兼業や副業などで2か所以上の事業所で勤務し、それぞれの事業所で社会保険の加入要件を満たす場合、両方の事業所で社会保険に加入する必要があります。
社会保険の加入対象となるケース
以下のような働き方をする方が対象となります。
• 複数の法人で代表者を務めている方
• ある法人で代表者を務めつつ、別の会社で正社員として勤務する方
• 複数の会社で正社員として勤務する方
• 複数の会社で短時間労働者として勤務し、それぞれの会社で加入要件を満たす方
なお、短時間労働者の加入要件は企業規模によって異なるため、お勤めの事業所にご確認ください。
社会保険の手続き
複数の事業所で社会保険に加入する場合、被保険者本人が手続きを行う必要があります。
1. 主たる事業所の選択と届出
同時に2か所以上の適用事業所で勤務することになった場合、被保険者自身が主たる事業所を一つ選択し、その事業所を管轄する年金事務所や保険者等を決定するための届出を行う必要があります。
• 提出書類: 「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」
• 提出者: 被保険者本人
• 提出時期: 事実発生から10日以内
• 提出先: 選択する事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所
※ 健康保険組合を選択する場合は、その健康保険組合にも届出が必要です。
この届出は、各事業所からの「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出が前提となりますので、新たに被保険者となる場合は、事業所から資格取得届が提出されているか確認してください。
2. 届出の種類
厳密には、状況に応じて提出する届出が3種類に分かれていますが、いずれも被保険者が10日以内に手続きを行う必要があります。
• 保険者の選択の届出: 勤務する事業所ごとに加入する保険者(全国健康保険協会、健康保険組合など)が異なる場合に、いずれか一つの保険者を選択するための届出です。
• 年金事務所の選択の届出: 勤務する事業所がすべて全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しているものの、管轄の年金事務所が複数に分かれている場合に、主たる年金事務所を選択するための届出です。
• 2以上の事業所勤務の届出: 上記2つのケースに該当しない場合(保険者が同一で、管轄の年金事務所も同一の場合)に必要な届出です。
保険料の計算方法
複数の事業所で社会保険に加入する場合、保険料は以下のように計算されます。
1. 標準報酬月額の決定: それぞれの事業所で受ける報酬月額をすべて合算した額に基づいて、標準報酬月額が決定されます。
2. 保険料額の算出: 決定された標準報酬月額に、選択した事業所が加入する健康保険の保険料率と厚生年金保険の保険料率を掛けて、総保険料額を算出します。
3. 保険料の按分: 算出された総保険料額を、各事業所の報酬月額に応じて按分し、それぞれの事業所が納付する保険料額が決定されます。
決定された標準報酬月額および各事業所が負担する保険料額は、選択した事業所の管轄事務センターから各事業所へ通知されます。
健康保険の資格について
• 被保険者が選択した事業所を管轄する保険者(例:協会けんぽ東京支部など)で資格情報が登録されます。
• 資格情報が登録されると、健康保険証を利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)が利用可能になります。
• すでに協会けんぽの被保険者である方が、引き続き協会けんぽ加入の事業所を選択した場合、被保険者整理番号が変更になります。マイナ保険証を持っていない等の理由で資格確認書が必要な場合、協会けんぽから交付されますが、時間がかかることがあります。急ぐ場合は協会けんぽに直接交付申請をすることが推奨されています。
留意事項
• 70歳以上の方が複数の事業所に雇用される場合は、「厚生年金保険 70歳以上被用者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出も必要です。
• 届書に個人番号(マイナンバー)を記載して提出する際は、マイナンバーカード等の本人確認書類の提示またはコピーの添付が必要です。
まとめ
もしあなたが複数の事業所で働き、それぞれの場所で社会保険の加入要件を満たした場合、あなた自身(被保険者本人)が手続きを行う必要があります。
以下に手順を簡潔にまとめます。
1. 各勤務先の状況を確認する
まず、それぞれの勤務先が社会保険の「被保険者資格取得届」を提出しているか(または提出する予定か)を確認してください。この手続きは、あなたが行う届出の前提となります。
2. 主となる事業所を一つ選択する
複数の勤務先の中から、主として社会保険の手続きを行う事業所を一つ選びます。
3. 期限内に届出書を提出する
・ 提出書類: 「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」
・ 提出期限: 2か所以上の事業所で勤務することになった日から10日以内
・ 提出先: 選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所
この届出を行うことで、複数の勤務先からの報酬を合算した正しい標準報酬月額が決定され、それに基づいて適切な保険料が計算されることになります。また、あなたが利用する健康保険も、選択した事業所が加入するものに決まります。
結論として、あなたは勤務状況が変わった日から10日以内に、主たる事業所を自分で決めて、指定の届出書を年金事務所へ提出しなければなりません。
日本年金機構:複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き