会社を辞めた後の健康保険はどうする?
会社を辞めた後の健康保険はどうする?「任意継続被保険者」制度を解説!
仕事の区切りを迎え、退職された皆さま、お疲れ様でした。退職後の生活で気になることの一つに、「健康保険はどうなるの?」という疑問があるのではないでしょうか。一般的には国民健康保険に加入するケースが多いですが、実は、これまで加入していた会社の健康保険を「任意継続」できる制度があるのをご存知ですか?
今回は、この「任意継続被保険者制度」について、基本的なポイントを分かりやすく解説します。
「任意継続被保険者制度」とは?
この制度は、会社を退職するなどで健康保険の資格を失った方が、ご自身の希望で、以前加入していた健康保険の資格を継続できるものです。通常、健康保険の資格を失うと国民健康保険に加入しますが、国民健康保険料が高額になる可能性があることなどを考慮し、この任意継続制度が設けられました。
任意継続被保険者は、会社に雇われていることを前提とするのではなく、資格を失った方が個人で任意に加入する仕組みです。そのため、資格の取得や喪失に事業主は関与しません。
加入できる人・要件
任意継続被保険者になるためには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
① 適用事業所で働かなくなった(退職など)、または適用除外者に該当したために、健康保険(日雇特例被保険者を除く)の資格を失った人であること。
* 例えば、会社を退職した場合が典型例です。また、75歳に達して後期高齢者医療の被保険者となった場合や、短時間労働者が労働条件の変更により週所定労働時間が20時間未満になった場合なども該当します。
② 健康保険の資格喪失日(通常は退職日の翌日)の前日まで、継続して2か月以上、会社の健康保険(当然被保険者)に加入していたこと。
* 「継続して2か月以上」がポイントで、「通算して2ヶ月以上」では認められません。
③ 資格喪失日から原則として20日以内に、加入していた健康保険の保険者(全国健康保険協会または健康保険組合)に申し出ること。
* この20日の期間は、資格を失った日(退職日の翌日など)から数え始めます。
* ただし、天災地変や交通機関のストライキなど、「正当な理由」があると保険者が認めた場合は、期間を過ぎた申出でも受理されることがあります。しかし、法律を知らなかったという理由は「正当な理由」には該当しません。
④ 船員保険の被保険者や後期高齢者医療の被保険者等でないこと。
なお、一度任意継続被保険者になった方が、再度、任意継続被保険者になることはできません。
いつから資格が始まるの?
任意継続被保険者の資格は、健康保険の資格を喪失した日(通常は退職日の翌日など)にさかのぼって取得されます。これにより、健康保険の空白期間が生じず、万が一の病気や怪我にも安心して対応できます。
会社員時代の健康保険との主な違い
* 保険料の負担: 会社員時代は事業主と折半でしたが、任意継続では保険料の全額を自己負担します。また、保険料の免除に関する規定は適用されません。
* 支給されない保険給付: 傷病手当金(病気や怪我で会社を休んだ間の所得補償)や出産手当金は支給されません。その他の医療費の給付などは、会社員時代と同様に受けられます。
* 保険料の納付: 毎月の保険料は、その月の10日までに納付が必要です。会社員時代の保険料(翌月末までに納付)よりも期限が厳格になっています。また、納付書により保険料を納付します。
* 標準報酬月額の決定: 保険料の計算の基礎となる標準報酬月額は、原則として「資格喪失時の標準報酬月額」と「その保険者の全被保険者の平均標準報酬月額」のうち、低い方が適用されます。ただし、健康保険組合によっては、退職前の報酬が高かった被保険者に対し、規約で定めることで、退職時の高い標準報酬月額を適用できるようになりました。これは、保険料の増収を図りたい健康保険組合側の要望を反映したものです。
* 事業主の関与なし: 氏名や住所変更の届出は、本人が5日以内に保険者に届け出る必要があります。会社員時代のように事業主を通じて行うことはありません。
いつまで続くの?途中でやめられる?
任意継続被保険者の資格は、原則として2年間継続できます。
ただし、2年以内でも以下のいずれかの事由に該当すると、その資格を失います。
* 死亡したとき。この場合、死亡日の翌日に資格を喪失します。
* 保険料を納付期限(通常は毎月10日)までに納付しなかったとき(最初の保険料を除く)。この場合、督促なしに納付期限の翌日に資格を失います。もし初めて納付すべき保険料を指定日までに納付しなかった場合は、任意継続被保険者とならなかったものとみなされます。
* 新たに会社の健康保険(当然被保険者)に加入したとき。再就職などで適用事業所に雇われた場合、その日に任意継続の資格は喪失します。
* 船員保険の被保険者や後期高齢者医療の被保険者等になったとき。これらの場合も、その日に資格を喪失します。
* 任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出たとき。この申出が受理された月の末日に資格を喪失します(つまり、翌月1日から資格がなくなります)。注意点として、申し出た月の保険料は必要です。また、もし申し出た月で保険料の納付期限が来て、それを払わなかった場合、保険料滞納による資格喪失が優先されます。なお、保険料を前納していた場合、未経過期間の保険料は還付されます。
国民健康保険との比較も忘れずに
任意継続制度を検討する際は、国民健康保険との比較も重要です。
* 国民健康保険には、雇用保険の特定受給資格者や特定理由離職者に対して、保険料が軽減される制度があります。この制度を利用できる場合は、国民健康保険の方が保険料が低くなる可能性もあります。
* 国民健康保険では、加入者全員分の保険料が必要ですが、健康保険(任意継続を含む)では、被扶養者がいても保険料が加算されることはありません。
* 健康保険組合によっては、付加給付(独自の給付)や保健事業・福祉事業が充実している場合もあります。
まとめ
任意継続被保険者制度は、退職後の健康保険の選択肢として非常に有効です。ご自身の状況や、国民健康保険との保険料、給付内容、扶養家族の有無などを総合的に比較検討し、ご自身にとって最適な選択をしてください。